2013/05/13

「染色の材」

 今回は染色です。ここでは糸を染めます。染織の仕事で自分の仕事の作法では、あんがい色から入ることが多いのです。もちろん素材からとか、意匠からとか、いろいろ入り方は多様ですが、私は色から入ることが好きです。染めに使われる染料ですが自然の染料、化学の染料等ありますが、これは良し悪しではなく、その人の好みでしょう。もちろん顔料を使うこともあります。ここでは自然素材の染料が主流です。色素材論は別に譲るとして、ここの仕事場のお話をします。
 

 三原色のYellow、Cyan、Magenta がベースです。 次の三種の自然素材は、そのままの色目ではじつに三原色の色によく似ていると思うのだ。
 先ず、Yellow 。 黄色はカリヤス(刈安)を使う。カリヤスはこの地方(長野県北安)では小茅と呼ばれて、かつては萱屋根に使われる高級材料であった。小茅しかない処では、別に高級でもなでもなかったのであろうが、大茅(ヨシ・ススキ類)とは区別されて用いられた。茅場は管理されて6尺もある立派な小茅が育っていた。小茅は珪酸の含有量が高いとされているので腐りにくい。昔は茅灰といって焼き物の釉薬にも使われていた。その小茅の払い落とした葉の部分を染色には使い、葉を落とした芯部分を屋根修理の刺し茅として用いた。講釈が長くなってしまったが・・・。


鎌で払われたカリヤスの葉

刈りとられ干されている小茅(カリヤス) よく二百十日のまだ青みのあるころ
に収穫しておくと良いといわれるが、経験ではそんなことはないといえる。
 
黄色に染まった絹糸(少し赤が入った色糸もある)


 つぎは Magenta 。赤はおもに蘇芳を使う。蘇芳はそのままの色だと青みがある。まさに Magenta だ。 これも講釈になるが、蘇芳の原木はかつて東京木場の職人は水上の材木を移動させるのに蘇芳の原木を棹代わりに持ちいていたらしい。硬くて水に強く持ちやすい太さ、後は長さだけれども、それがあれば確かに立派な道具だ。木場の人に確認はしてはないが、そのようないい伝えがあったのだから、そうだったのかもしれない。
 
蘇芳の原木と売られているチップ状の蘇芳

蘇芳で染まった糸(黄色が入っている)

 

 最後は Cyan である。これは藍だ。管理には手はかかるけれども、それさえ完璧ならば、いつでも綺麗な色が染まり、染めにはとても楽な染料だ。


建っている藍

藍で染まった絹糸




 自然素材の染料といっても、そのものだけの染材で染め上げてゆくこともあるが、やはり自分の色を好みに創りあげてゆくものである。自然染料は制約の多いものであるが、そのなかで色を混ぜながら色を作ってゆく、あんがいに楽しみでもある。

雑多な染め作業場

これは桜の小枝を煮出した染液で染めた色

いろいろに染めわけた経糸







 
自然素材の色を混ぜ合わせて出来る色

 
 
 
 
 

〔おりもの修行中/ランラン日記〕
学ぶことは真似ることとよくいうけれど、ただまねするだけのことが難しい。
大学生のとき、先生に「あら、不器用ね」なんてじーっと見られてカチン
コチンにかたまってしまった。たったいま見せてもらったのに同じように体
がうごかない。情けなくなったことをおもいだした。








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