2013/03/21

「かせ繰り機」


 糸のかせを繰る道具。ここで使われる、小幅ものの絹糸一綛の長さは約1337mある。これが沢山になるので、下の写真のような電動の綛繰り機を使うのである。古いものなのだが良く動いてくれる。この綛繰り機は、一綛を解くのに一日から一日半もかかる絹の細い生糸を解くのにも使われる。これがなくては思うような糸作りは大変だ。
 
電動のかせ繰り機

 これは手動のかせ繰り機。伊勢崎の古澤さんのところの糸繰り機だ。ながくながく使っている優れものだ。

木製の糸繰り

 これは鋳物でできた糸繰り、糸繰りという目的はクリアーしているが、他の使い勝手のよい道具を使ってしまうと、なじみのうすい道具かな。十分に機能の目的は達しているのだが。

鋳物製の糸繰り


糸繰りのときに綛をかける道具
 
 これは本道はなんだろうか。いろいろに応用できる道具だてだ。かせ繰り機という道具がなかったとき には代用もできただろう。
 
おまえの名前はなんと言うのか


 これは繭から糸をとる道具、座繰り(糸繰り)と鍋。いまは特殊な糸のように言われているが、 古くは地方では自家製糸はこれが主流だった。もちろんこの糸繰り機で糸も繰ることはできる。しかし糸取りに使っていたものは汚れるので、専用の糸繰り機を使ったのかな。道具は変わりない。
写真の手前に座り、左手で座繰りを回し、右手側にある鍋に繭が煮込まれているものから、糸を引き揚げて巻き取ってゆく。農家で出荷できなかった屑繭を自家製に用いているところが多かった。
 
かつては主に自家用糸に使われた


 

〔おりもの修行中/ランラン日記〕
昔の当り前が、今の自分に新鮮に見えてもけっして新しいものではない。
たどってきた道とゆくこれからとをじっと見つめ、現在にぴったりの新しさに
繋いでゆけるか。少なくて珍しいことが、価値のなかみの囲い込みや棲み
分けをひょいと越える、拓かれたまなざしで可能性はひろがるか。 おおお





 

2013/03/14

「ちいさな道具」


ちいさな道具


真鍮製筬通し
 筬羽に経糸を通すときに使用するヘラ状の道具。糸をひっかけるための切
り込みと、押し込むためのV字型の加工がある。糸の太さ、一人仕事等により、
「引き出し」「押し出し」を使い分けることができる。中央部分が厚く、片方の引き
出し部分は 叩いて薄く加工してあるので、目の細かな筬にも対応する。
 
さまざまな綜こう通し
 経糸をかね綜こうの穴に通すときに使う道具。細いものは絹糸など細い糸用。太
いものはウールなど太い糸や、木綿・絹糸など、ある程度細い糸まで万能に使用で
きる。右のものは木製の柄がついている。それぞれに持ちやすさが工夫されている。
  
アルミ製五分めがね
 鯨尺定規の5分のメモリが刻まれているので、私たちは五分眼鏡とよ
んでいる。折りたたみ式のアルミ製ルーペ、材質はいろいろあり。布地
の解読、織り作業の緯糸の打ち込み本数を調べるためにも使用する。
 
つなぎ針

ベルトに使う紐をつなぐときに用いる針
 
  
〔おりもの修行中/ランラン日記〕  
地味で地道な繰り返しの仕事を、小さくてもなくてはならない道具たちが支えている。
少しの個性の違いはあっても、取替えのきかない自分の持ち場で役目を果たしてる。
 
 
 
 
 
  

2013/03/10

「撚り機」

 「撚り機」 経糸や緯糸を使いやすくしたり、用途の目的に合った布地を作るために、糸に撚りを入れる道具である。もちろん撚りを入れない布もある。 糸を撚る方法にもいろいろな種類があり、専門の大きな撚り屋さんもあるが、手仕事の織物の糸をよってくれるところは少なくなった。
 ここにも数年前まで、すでに使ってはいなかったが木造製の片側40錘、両側で80錘の撚り機もあったのだが、解体した。
 現在は(下の写真)、リング式の撚り機を使っている。1968年松本市で作られたものである。長所短所はあるが、小さな仕事場での撚り機としてはコンパクトで使い勝手がよい。しかし既に40年以上たっているものだ。見かけは悪いがりっぱな現役。
 


リング式撚り機

撚りをかけているところ
同上上部
 
同上下部
  
昔の、地域で使われていた小さな木製の撚り機。これは6錘。
理論的には八丁撚糸機の家庭版か、撚りを簡単に変えること
はできないが、自分で作業ができたから重宝しただろう。これに
もいろいろなスタイルがあった。現在使っているところはないかな。
 
同上手回し部分
 
これは紡毛機、主に真綿から紬糸をひくのに使われている道具。
ただこれは、太い細いのある、むら糸に撚りをかけるにはつごう
が良い道具だ。指先で調整しながら太・細い部分にも、ある程度
均等に撚りがかけられるのだ。何事も使い勝手がだいじかな。
  
 これは検撚機、糸の撚りを調べる道具。
 
同上テンション位置
 
同上撚り数カウンター部分
  
イギリスの紡毛機、これも撚りかけ道具。
 
 
〔おりもの修行中/ランラン日記〕 
 道具も技術も 歩みを進めて発達してきた。つくられた時代や環境
に揺り動かされながら、与えられた資材で めいっぱい働き、ときが
流れていくなかで心地のよいところに寄り抱き込まれ流されて運ば
れていく。残るもの、朽ち果てないものは、まれだろう。ただ、それ
を 切り捨てずに見届けることはしておきたいと思う・・・。
 
 
 
 
 
 
 


2013/03/01

「管巻き機と管」

 今回は「管巻き機と管」、織物の緯糸を管に巻き、杼の中に取り入れて使われる。俗に「管を巻く」という酒飲みの醜態をあらわす言葉としても用いられる。・・・江戸初期にはすでに今と同じような意味で使われていた・・・とある。なぜ仕事と酒飲みがつながったかはわからないが、江戸期の糸車の大事な仕事は、管に糸を巻くこともさることながら、糸に撚りをかけるという仕事のほうが大事だったろうか。確かにその仕事のときには単調なリズムの仕事で、ブンブン ブンブン ク~ルクル、というリズムなので、酒飲みの、ゴチャゴチャ ゴチャゴチャ ム~ニャムニャ、のリズムと合っているかもしれない。ただどうして、「管巻き」が管をまくになったのかは疑問だな。
 
 まあくだくだと言うことはさておいて、いまの管まきはそのようなスピードではない、昔の糸巻き道具でさえ語り草、現代の糸巻きは手仕事の織物でさえ、動力はモーターがする。
 
 
いわゆるこれが糸車、糸巻きともいっている。材は台は木で、輪は竹でできている。輪を回
し緯糸を管に巻くほか、麻・木綿・絹糸の撚りかけにも使用した。糸巻きも時代が変わると糸
車の形体は変わらぬが、竹でできた輪が鉄の輪に変わり、そして次は輪の代わりにモーター
がついた。
 
鋳物でできている管巻き。案外に力がいる。
 
モーターの管巻き機。これはモーターの軸に直接管が取り
付けられるので、管がふれないで巻きやすい。その上制御
つきスイッチは足踏みで操作できるので仕事がしやすい。
 
管巻き機の大きさの比較
 
飛び杼用管。左2本は旧力織機用管で糸巻きは機械がする。
それ以外の小さめの管は手機飛び杼用管。いずれも木製。

 

手投げ杼用管のいろいろ。左4本は糸太物用管、糸が
巻いてある管はハガキを丸めた手作りの紙管。隣は木製
の管、青い管はプラスチック製の管、右3本は竹で作った管。

まだまだ、それぞれの使い手による管巻き機と管があるのだろう。私の仕事場の管巻きと管でした。



〔おりもの修行中/ランラン日記〕

 桜材で染めた経糸を整経した。ようやく思うように糸が動
いてくれるようになってきた。体も道具、なめらかに動くよ
う繰り返しトレーニングとメンテナンスが大切と知る。