2013/01/30

「整経台と整経機」

 
 今回は整経台と整経機の紹介。この二つは織機で織るための、経糸を整える作業をする道具なのだ。

   
         
  この整経台は古いものだ。枠の縦0.9m、横2.65m。整経台の材は、枠と糸をかけるクイは樫材、そのほかの部分は松材を用いている。今の台の状態で最大で約130m(着物の長さで約10枚分)の整経できる手延べの整経台。手前の枠の6本のクイは、いまどのくらい整経がすすんでいるかをカウントする数え綾と、糸を一本ずつ交互にクロスさせてやる、大事なクイなのだ。                      


織物の準備工程で、経糸の必要な長さ・本数・糸の配列順序などを正確に整えることが整経。整経作業をするとこのようになる。
 
整経の作業中

 
          ― 整経台部分の説明 ―                
                 
    
クイは片側に25本ある。向こう側にも同じ数だけある。このクイに糸がかかってゆく
 
綺麗に張られた経糸
                                     
                       
色糸が重ねられてゆく
 
 
整経後、綾が取られた経糸

 
 
次は今は使われなくなっている整経機。これも大方は木で作られている。手回しで巻き取りは動力を用いている。使い勝手のよい整経機だ。しかし数の仕事をしなくなってからは所在無さそうだ。広幅の織物をするときには便利なので使うくらいかな。昔は活躍したのだが。 

手前の弓なりになっている白い穴のあるものは、糸道の先導
板、その次の四角な枠が綾をつくるところ、奥の大きな輪枠が
経糸の巻かれる輪


横から見た部分


前方部分

 
 以上がここの仕事場の整経台と整経機の紹介でした。手仕事では、このような大そうな道具がなくても整経という作業はできる。しかし、たとえ手の仕事でも精度の高い仕事をするには、ある程度の道具があると仕事はたいそう楽になる。世界各国の手仕事の織物の仕方は千差万別、その仕事に根ざした方法がそれぞれにあるのだ。 これで、この仕事場の仕事はお分かりになりましたね。
 
 
 
 
 
 
 


2013/01/13

「柿渋のこと」


柿渋作りは二百十日ごろといわれている。昨年(2012)は夏場が暑かったせいか、小柿の生育がよかった。例年(いつもは二百十日過ぎ)よりは早いが、柿渋作りの作業をした。

よくみのったもぎ取られた小柿の実

実を潰す石台と縄輪

輪の中に入れた小柿の実  こうすると潰すときに外に飛び出さない

木槌で潰す作業

つぶす作業は終了
 
これで作業は終了、あとは容器に移して、およそ小柿と同量の水を入れ撹拌、数日間してから漉して保存容器に移して保存する。これは一番取り渋。

潰した実に水を加えて撹拌
                                     
最初の作業と同じように、一番目より少ない水をいれ二番渋を取る。三番渋までぐらいは取れる。この一、二、三番の渋の濃度は、使用目的によって使い分ける。寒い地方では、冬季保存中に渋を凍らせてしまうと、渋の効果はなくなってしまう。


1番搾りの柿渋(7日目に搾る)

昔から柿渋は重宝されてきた。今は、このものが持つ効果が、合成で作られてゆく。ここでの柿渋の使い道は、先ずは夏物の着物、帯などに用いる糸の染色材として使用する。それから和紙に渋を塗り重ねて渋紙を作り、筬その他の機道具の修理、補強材としても利用する。そして塗料としての使命もある。
いま、これに変わる便利なものは沢山あるが、しかし使用に楽な反面、美しさ・使用感覚・フレキシブルな強さ・・・等、柿渋の方が優れている場合もある。どちらを選ぶかは、その人が決めることだろう。